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その経費で税金はどれくらい安くなる?
「経費を多く計上すれば節税になる!」みたいな話はよく聞くと思いますが、それはどういうことなのか自分の経験を踏まえて解説してみたいと思います。
もちろん経費が多くなるほど税金は当然少なくなります。
ですが、自分も最初の頃は誤解していたのですが、経費はそのままの金額で税金から直接は引けないということになります。
まず、簡単な例を紹介しますので、確認の意味でも読んでみてください。
残念ながら経費はそのままの金額で課税される税額からは引けない
最初に言ってしまうと、見出しのとおり計算した税額から経費分を直接引くことはできません。
例えば、その年の税金が100万円として、かかった経費が30万円あったとします。
100万ー30万=70万(最終的な税額)
上記のように、経費30万円は直接税金から引けません。
「収入-経費=所得」という部分は正解なんですが、その使った経費が30万円もあるのに、30万円分としてそのまま推移して税額から引けないというのは、最終的な「累進税率」が原因となります。
例えば年末に50万のカメラを購入した場合
文章だけだと「なんのこっちゃ?」となるかもしれないので、もう少し具体的な例を出してみたいと思います。
ここでは、事業収入が700万円あり、その年に50万円のカメラを購入して、経費計上することにします。
計算式は次のとおりです。
(収入ー経費)×税率=税額
年収700万、税率が20%とすると...
(700万ー50万(カメラ代金))× 20%=130万
となり、税額が130万円と計算できます。
つまり、50万円のカメラの経費は10万円として税額から引くことになります。
収入と経費を税率20%でそれぞれ掛けて金額を出してみました。
700万円の収入×0.2(20%)=140万円 (納める税金の金額)
50万円の経費×0.2(20%)=10万円 (納める税金から引ける経費の金額)
140万円ー10万円=130万の税額
なぜ経費の50万円分が10万円になってしまうのか。それは、最終的な税率で計算されてしまうので実質の経費分の金額が下げられてしまうからです。
実はこの税額の計算は少し複雑になります。
次で計算のステップなどを分かりやすく紹介していきますので、経費で税金を抑えたい方は読み進めてみてください。
個人事業主としての税金の計算方法
個人事業主の場合、税金の計算は次の3つのステップに分かれます。
1.収入ー経費=所得
2.所得ー所得控除=課税所得
3.課税所得×累進税率ー税額控除=税額
これらについて、例もふまえながらもう少し詳しくみていきます。
先ほど説明したとおり、ステップ1の経費は税額からそのまま引くものではなく、収入から引くのがルールです。
収入から経費を引いて「所得」が計算されますが、ここからさらにステップ2の「所得控除」があります。
所得控除とは、色んな家庭の事情をみて税金の負担を調整するためのものです。
たとえば、医療費控除や扶養控除やふるさと納税などがあります。
個人事業主であれば、小規模企業共済掛金控除や個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)などもありますね。
ここまで計算して出した数字を「課税所得」と呼びます。この数字の大きさで税率が決定されます。
日本の所得税は累進課税なので、お金持ちほど税率も高くなることは皆さんご存知だとおもいます。
ということは、節税のためには経費や所得控除でどれだけ課税所得を小さくできるかがポイントになります!ここはすごく重要だと思います。
税額控除は住宅ローンを組んでいる人などに関係する場合もあります。
【注意】経費50万と税金が50万減るのは意味が違う
ここまで読んでいただいたらもうお分かりだとは思いますが、経費が50万あるからといって、税金がそのまま50万円少なくなるというわけではありません。
経費が50万あるとしたら、それだけ所得も課税所得も減っていきます。ただ、じゃぁ税金もそのまま経費50万で推移して減るのかといったら違います。
今度は本格的な例でみてみます。
・年収 700万
・経費 50万
・所得控除 30万
・税額控除 20万
・税率 20%
かなり大雑把な例ですが、分かりやすいと思うのでこれでいきます。
では先ほど紹介した3ステップに当てはめてみます。
1.収入ー経費=所得
700万ー50万=650万(所得)
2.所得ー所得控除=課税所得
650万ー30万=620万(課税所得)
3.課税所得×累進税率ー税額控除=税額
620万 × 20%ー20万=104万(税額)
このようになりました。
つまり、ここでの例だと、累進税率が20%なので、50万円の経費は10万円として税額から引くことになります。繰り返しになりますが、50万円をそのまま税額からは引けません。
結局のところ、個人事業主の場合、使った経費は最終的に「累進課税」で計算されてしまうので、そのまま経費50万をまるまる推移させて税額から引くことはできないということになります。
ちなみに、個人事業主には強い味方の小規模企業共済やiDeCoも同じ考え方
個人事業主のメジャーな節税方法である小規模企業共済やiDecoも経費と同じ考え方です。
ポイントは、どちらの掛金も「所得控除」として処理されることです。経費は収入から引きますが、所得控除は所得から引かれることになります。
1.収入ー経費=所得
2.所得ー所得控除=課税所得
3.課税所得×累進税率ー税額控除=税額
計算するステップが違うだけで、所得控除も経費と同じように課税の対象となる利益を小さくする効果があります。
ただし、結局払わないといけない税金は、所得控除のあとの「課税所得」がいくらかによって決まるので、「所得控除」も税率で最終的には小さくなってしまうのです。。
極論、課税所得の金額によって税率が決定する(累進課税)ので、経費と同じく所得控除額の掛金分も税額から直接引くことはできません。
言葉だと分かりにくいので、住民税も含めて簡単な節税シミュレーションをしてみたいと思います。
ちなみに、住民税は細かくいうと「所得割」と「均等割」の2種類があるのですが、今回は「課税所得の10%」と決まっている所得割のみを計算に入れていきます。
■経費あり、小規模企業共済とiDecoありの場合
設定は次のとおりで計算します。
・年収 700万
・経費 100万
・小規模企業共済の掛金 12万/年(月1万)
・iDecoの掛金 6万/年(月5,000円)
・青色申告特別控除 65万
・基礎控除 48万
・税額控除 なし
青色申告特別控除は個人事業主が最大65万円の所得控除を受けられる制度です。また、基礎控除は一律で48万円です。これらの金額も含めてみます。
◆所得税の計算
1.所得
700万ー100万=600万(所得)
2.課税所得
600万ー(12万+6万+65万+48万)=469万(課税所得)
3.税額(税額控除はなしとする)
469万 × 20%=93万8,000(税額)
※課税所得が469万円の場合、所得税率は20%です(2022年現在)。
詳細は国税庁のHPから確認できますよ。
かなり簡単な計算ですが、これで所得税の計算は終わりです。
◆住民税の計算
所得割は、課税所得の10%です。
469万×10%=46万9,000(所得割の住民税)
となり、最終的な税金は所得税が93万8,000円、住民税が46万9,000円となりました。
■経費あり、小規模企業共済とiDecoはなしの場合
今度は経費はあるものの、小規模企業共済もiDecoも未加入だと想定して計算してみます。経費がゼロというのは考えにくいので、少しは発生していることにします。
・年収 700万
・経費 50万
・小規模企業共済の掛金 なし
・iDecoの掛金 なし
・青色申告特別控除 65万
・基礎控除 48万
・税額控除 なし
◆所得税の計算
1.所得
700万ー50万=650万(所得)
2.課税所得
650万ー(65万+48万)=537万(課税所得)
3.税額(税額控除はなしとする)
537万×20%=107万4,000(税額)
※課税所得が537万円の場合も、所得税率は20%です(2022年現在)。さっきと同じく、詳細は国税庁のHPから確認できます。
◆住民税の計算
537万×10%=53万7,000
というわけで、こちらのシミュレーションでは所得税が107万4,000円、住民税が53万7,000円となりました。
2つのシミュレーションの結果として、所得税が13万6,000円、住民税が6万8,000円も違ってくることが分かりました。
ざっくりとした計算でしたが、かなりの差ですよね。
結果的には、小規模企業共済やiDecoはやったほうが節税になるのでおすすめということですね!
経費は収入から引いて計算する!所得控除で節税効果アップも
ということで、経費は税額からそのまま引くことができず、まずは収入から引いていき、最終的に税率で計算されて税額が決まるということでした。
税額からそのまま引くことと、収入から引くことは、同じように見えても結果は全然違います。なぜなら、最終的に「累進税率」によって計算されてしまうからです。
それと、シミュレーションでも紹介したように所得控除も節税にはかなり大事です。
小規模企業共済やiDecoは個人事業主にとってもメジャーな節税方法だと思いますが、経費と合わせると大きな効果が生まれます。
ただ、掛金は無理のない範囲で拠出しておいた方がいいと思います。
単純に経費や所得控除の金額だけで節税効果を考えるのではなく、自分の年収がどれくらいなのかも頭に入れておくことをおすすめします。
今回紹介した3ステップの計算方法に当てはめてみると分かりやすいと思います。
最後に、節税効果は経費や所得控除だけでなく収入によっても違ってきます。収入に対してどれだけ引けるものがあるかを考えることがポイントです。
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