掛金は所得控除の扱いなので、所得から引かれます。間違った計算だと節税の額が想定と全然違ってくるので注意してください。
目次
小規模事業者共済やiDeCo(イデコ)はどれくらい節税になる?
小規模企業共済とiDeCoは、YouTubeなどでもよくおすすめされていますよね。
ただ、税金の計算がややこしくて、個人的には節税といってもどれくらい効果があるのかピンと来ない……。と、感じました。
なので、あらためて詳しく調べてみました。
今回は掛金が節税にどう効果があるのかイメージできるように、分かりやすくシミュレーションも含めて解説していきたいと思います。
まずは、小規模企業共済もiDeCoも掛金の上限MAXで支払っている前提で節税効果を確認していきます。
- 小規模企業共済 月7万(84万/年)
- iDeCo 月6.8万(81.6万/年)
年収600万で、掛金以外に差し引かれるものはなしという設定で計算します。
かなり簡単なシミュレーションですが、その方が効果も分かりやすいと思います。
小規模企業共済とiDeCoに加入していない場合
600万×20%=120万
課税所得が600万だと、税率が20%です。結果、120万円の税金を支払うということになりました。
小規模企業共済とiDeCoに加入している場合
600万ー(84万+81.6万)=434.4万
434.4万×20%=86万8,800
課税所得が434.4万の場合も、税率は同じく20%です。
結果は86万8,800円となりました。
この簡単なシミュレーションでは、小規模企業共済とiDeCoの掛金をMAXで支払っている場合だと、約33万円が節税できるという結果になりました。
しかし、小規模企業共済とiDeCoと合わせてその年に掛けた金額が合計で約165万もあるのに、たった33万円しか節税になっていないんです!
ということは、165万円を全額控除というのは、165万円が支払う税金から引けて安くなるということとは全く違うということです。
節税で失敗して逆に資金繰りが悪化してしまう可能性もあるので、次で正しい計算ステップを説明していきます。
小規模事業者共済やiDeCo(イデコ)で掛けた金額がそのまま税金から引けないので注意
まず大事な点として、税優遇されている小規模企業共済やiDeCoの掛金だからといって税額からそのまま引くことはできません。
簡単に税金計算のステップについて説明していきます。
税金計算のステップ
- 収入ー経費=所得
- 所得ー所得控除=課税所得(←ここで小規模企業共済やiDeCoが引かれる)
- 課税所得×累進課税ー税額控除=税額(←最終的に税率をかけて支払う税金が決定)
小規模企業共済とiDeCoの掛金を引くのは、ステップ2のときです。
理由は、小規模企業共済やiDeCoの掛金は「所得控除」という扱いだからです。
さっきの簡単なシミュレーションでも、年収から掛金額を引いた後に税率をかけましたよね。
「節税」と言われると、税金からそのまま引けるのかなというイメージを持ちそうになりますが、あくまでも税金の計算途中で引かれるという意味です。
最終的に「累進課税」で所得に応じての税率で掛けられてしまうので、思ったほど節税にはならない仕組みです。
次に、小規模企業共済とiDeCoの掛金をMAXでしていた場合、仮に正しい計算と間違った計算ではどれくらい違ってくるのか検証してみようと思います。
間違った計算方法だと資金繰りに悪影響も!節税の額も全然違う!
次のような条件で計算してみます。
- 年収 1,000万
- 経費 200万
- 掛金 165万6,000円(小規模企業共済+iDeCoのMAX額)
- 税額控除 なし
間違った計算の場合(税額からそのまま引く)
所得と課税所得
1,000万ー200万=800万
本当はこの800万円が所得で、その所得から掛金を引くのがルールです。
ただ、ここでは間違った計算ステップという設定なので、先に税率をかけてそこから掛金をひくことにします。
掛金控除前の税額
800万×23%=184万
課税所得が800万円だった場合、税率は23%です。
そしてここから小規模企業共済+iDeCoのMAX額の掛金の165万6,000円を引きます。
掛金控除後の税額
184万ー165.6万=18万4,000
そうすると、税金は18万4,000円で済むという結果になりました。
年収から考えて、かなり少ない金額の税金ですね。
正しい計算の場合
所得
1,000万ー200万=800万
課税所得
800万ー165.6万=634万4,000
税額
634.4万×20%=126万8,800円
課税所得が634万4,000円の場合、税率は20%です。
そして出た結果が126万8,800円!!!
まぁ本当は基礎控除とか青色申告特別控除とかがあるので、もっと少なくなりますが、ただ、今回は分かりやすくするためにちょっと大げさな感じにしてみました。
というわけで、間違った計算方法と正しい計算方法では100万円以上の差が出ます。
これは、経費や車などの減価償却費なども同じ考え方です。
経費ばかりかけてしまうと思ったほど節税になっていなく、結果手残りがすくなくなって、資金難になってしまうので本当に注意しください。
ただし、小規模事業者共済は掛金累計+αで戻ってくる!
小規模企業共済は、加入期間が3年以上(36か月以上)の場合、今まで支払った掛金の累計額よりも多くの共済金を受け取ることができます。
というのも、iDeCoは運用に失敗して損失が出てしまう可能性もあるからです。
将来のためにコツコツ掛金を払ってきたのに、いざ受け取るときにマイナスになっていたら意味ないな…とも思っちゃいますよね。
もちろんそれぞれにメリット・デメリットがあるので簡単には言えないですが、小規模企業共済とiDeCoにはそうした違いがあることを知っておいて損はないです。
小規模企業共済はどれくらいプラスになるのか、次で紹介します。
小規模企業共済の共済金は3年以上の加入でどれくらいお得になる?
共済金は、「共済金A」「共済金B」「準共済金」の3種類に分かれています。
このうち、さっき紹介した累計掛金にプラスαの金額が受け取れるのは「共済金A」か「共済金B」のパターンです。
「共済金A」は廃業や本人が死亡した場合、「共済金B」は65歳以上で180か月(15年)以上掛金を払い続けた場合に受け取れます。
じゃぁ具体的にどれくらいの増加額になるの?というところですが、共済金Bの場合だと次のようになると公式サイトで発表されています。
毎月の掛金が1万円の場合
5年 | 10年 | 20年 | |
掛金累計額 | 600,000円 | 1,200,000円 | 2,400,000円 |
共済金B | 614,600円 | 1,260,800円 | 2,658,800円 |
増加額 | 14,600円 | 60,800円 | 258,800円 |
5年くらいだと感動するほどのプラスはありませんが、20年続けると25万円以上も多くもらえます。
なかなかすごいですね。
ちなみに、ふるさと納税も同じ考え方で税額から全額は引けない
ふるさと納税の場合、寄付金控除を受けられます。
これも小規模企業共済やiDeCoの掛金と同じで「所得控除」という扱いになります。
ただ、掛金は全額が所得控除だったのに対して、ふるさと納税の寄付金は全額が引かれるわけではないので注意が必要です。
では、いくらならいいの?ということですが、次のような計算になります。
寄付金の合計額ー2,000円=控除になる額
というわけで、2,000円を超えた部分についてが対象となります。
ちなみに、「寄付金の合計額」というのはいくらでも無限にできるわけではなく、総所得の40%までと決められています。
なので、たくさん寄付するのは個人の自由ですが、だからといってそのうち2,000円を超える部分が無制限に所得控除になるというのは違います。
その点はご注意してください。
小規模企業共済やiDecoの掛金は所得控除!正しい知識で節税額を計算しよう
今回のポイントは、小規模企業共済やiDecoの掛金を税額からそのまま引くことはできないので、まず所得から引くという点です。
そして最後に税率をかけていくので、当然掛金よりも少なくなってしまいます。
その理由は小規模企業共済やiDecoの掛金は「所得控除」という扱いだからです。
経費も同じ考え方で、最終的に税率でかけられてしまうのでそのままの金額を税額からは引くことができません。
また、ふるさと納税も考え方は同じですが、全額ではない点に注意が必要です。
間違った計算方法でシミュレーションしてしまうと、実際の節税額が思ったほどではなく結果、資金繰りが悪化してしまいます。
節税のためにガンガン掛金を支払ってしまうというパターンもあるので注意が必要です。
結果、小規模企業共済やiDecoは節税の強い味方ですが、無理のない範囲で掛金を決めて節税につなげるのが一番だと思いました。
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