法人化したら決算月を決めないといけないので「法人化するなら何月がいいんだろう?」と、法人化を目指す個人事業主の方は悩みますよね。
法人によっても違うようですが、調べてみると法人化のタイミングよりも決算月のタイミングの方が重要ということはわかりました!
今回は、個人事業から何月に法人化するのか、決算月をいつにするかを決めるためのポイントをお伝えしていきたいと思います。
目次
法人化するタイミングは何月がベスト?
法人化するタイミングは、毎年かかってくる個人事業の税率が法人税よりも高くなる場合や、従業員を雇い取引先への信用度をアップしたいときにすれば良いようです。
簡単にいうと、法人化するタイミングは事業の経営状況を考えた上で決定することなので、「〇月がベスト!」と言える月がないというのが、答えとなります。
そして、何月に法人化をするかよりも、法人化した後に決算月を決める方が重要です。
とはいえ、目安がないといつ法人化をしていいかわからなくて悩んでしまいますよね。
僕が調べた結果、以下のようなタイミングで法人化する月を決めた方も結構いました。
※事業形態や現在の環境や状況によっても異なります。おおよその目安としてとらえてください
- 税理士や会計士が忙しすぎない時期:6月以降、特に7月、8月
- 自分の事業の繁忙期とかぶらない時期:例えば毎年11月~12月は繁忙期なら避ける
それと、「法人住民税」の均等割のルールにも注目しておく必要があります。
法人化や決算月って?
法人化について
法人化とは、個人事業主として仕事をしていた人が法人(一般的には、株式会社)を設立して、その立ち上げた法人で個人事業として行っていた事業を引き継いでいくというものです。
また後ほど紹介しますが、個人事業主だと所得税率が高いため、収入の額によっては法人化した方が税率を抑えられるメリットもあります。
決算月について
法人化をすると決算月を決めないといけません。
決算月とは、ざっくり言うと会社の経営状況や業績を正確に把握し、収めるべき税金額を確定させるために必要な月のことです。
会社は永遠に存在し続けるという前提で創られます。
しかし、定期的に会社の経営状況を把握して報告する必要があるため、決算月というものを決めることで報告のタイミングを作っています。
決算を迎えたら何するの?
簡単にですが、決算を迎えたらやることをまとめてみます。
- 売り上げや利益、資産や負債などの金額をきっちり出す
- 納めるべき法人税や地方税、消費税の金額を確定させる
- 税務署に書類を提出し、納税する
会社の規模などによってもまた違うのですが、かなりざっくり紹介するとこんな感じです。
法人化のタイミングまとめ
法人化するタイミングは事業の経営状況を考えた上で決定するが、6月・7月・8月あたりがタイミング的にはよい。
また、月初めの1日は避けるのがおすすめです。
1月~5月は税理士や会計士が忙しい可能性大
法人化や決算についてざっくり理解したところで、法人化のタイミングについてまとめていきます。
一概には言えないですが、1月~5月あたりくらいは税理士や会計士が繁忙期なので、法人化は避けた方が無難かもしれないです。
その理由は、色々な相談に乗ってくれたり、実務面を手助けしてくれたりする税理士や会計士が忙しい時期だと、思うように時間をとってもらえない可能性があるからです。
といっても、1年の中で忙しくなったり少し時間ができたりの繰り返しだと思うので、あくまでも目安だと思ってください。
それと、自分自身が忙しい時期に法人化の手続きを進めるのも大変です。
税理士や会計士の事情に加えて、自分の仕事が1年でピークを迎える時期は避けた方が余裕ができるので、無難だと思います。
法人化するとき月の「1日」は避ける
もうひとつ大切なポイントがあります。
それは「法人住民税」の均等割のルールです。
法人住民税の均等割の額は、設立期間が1年に満たない場合には、「均等割額×事務所等を有していた月数÷12」で求めるとされています。
そして、設立日が1日ではなく月の途中の場合は、その月は切り捨てて計算されます。
なので、1日を避けることで節税をすることができるというわけです。
つまり、4月に法人化するとしたら2日以降にした方が1か月分の法人住民税を安く済ますことができるというわけです。
何かのスタートとなれば心理的に1日を選んでしまいがちだと思いますが、そういうワナもあるのでご注意ください。
法人化する日は決算月と離した方が消費税がお得になる
条件を満たすと、法人化してから2期分(2年)は消費税が免除されます。
その条件というのは1期目と2期目で違うのですが、具体的には次の通りです。
1期目
- 資本金が1,000万以下
- なおかつ、大会社の子会社ではない
見出し(全角15文字)
- 事業開始から6か月間の課税売上高が1,000万以内
- 事業開始から6か月間の給与支払額が1,000万以内
もし条件を満たしているのに消費税を納税してしまった場合は、残念ながら納めた分は戻ってきません。
なので、条件はしっかり確認しておくようにしてください。
これらの条件をクリアすれば2期分は消費税が免除されるわけですが、ここで法人化したタイミングとの兼ね合いが大事になってきます。
第1期目は法人化した日から最初の決算日までをいいます。
ということは、この免除制度をMAX活用しようと思ったら法人化する日と決算日をなるべく遠く離した方がお得になります。
例えば、法人化した日が6月10日で決算日を6月30日にした場合、1期目で免除される期間がたったの21日分しかないことになりますよね。
本来であれば24カ月分も免除されたはずなのに、数十日だけとはもったいないことです。
なので、法人化を6月とするなら決算月は5月とするのが一番お得になります。
また、法人化してすぐに決算月を設定してしまうと、少ない期間でも一応一通りの決算書類の作成が必要になるので、その手間と外部依頼する際はコストもかかってしまいます。
会社の決算月の違いでどんな影響がでるの?
おさらいになりますが、決算月は会社の利益を計算して、そこから納税するべき金額を確定させ、最後に税務署へ報告し納税していく作業になります。
言葉にすると簡単ですが、実際には会社の業績などが示された書類などを用意する必要があります。
大きい会社だと経理担当の人がメインでやると思いますが、個人事業主から法人化した場合だと一人社長の場合も多いと思うので、結構難しい作業になります。
そこで登場するのが税理士や会計士で、書類の作成や申告などを自分に代わって作業してくれます。
基本的には通帳など現預金の残高がわかるものや領収書など、税理士や会計士からお願いされた書類を準備することで進めてくれます。
この辺は当然ながら個人事業主よりも処理が複雑になり、最悪、申告が間に合わなかったということも考えられます。
決算月の違いで影響がでてくる可能性というのは、上記のように制度的な有利・不利という意味ではなく、決算業務にかかる手間や節税への影響が問題となります。
具体的には、決算月を決める上では次のようなことを考えておくのがとても大事だと思います。
- 売上が多く上がる時期はいつか (例えば11月や12月の年末)
- 節税対策を考えているか
- 税理士や会計士が時間を取りやすい時期か
ほかにもあるとは思いますが、このような点が大きなポイントだと思います。
決算月のタイミングまとめ
法人化する日と決算日をなるべく離した方がお得なので、法人化した約一年後の6月、7月、8月あたりかつ、繁忙期は避ける。
売上が多い月を決算月と決めると節税の対策が遅れるかも……
決算月の後は法人税や消費税などを決定して申告するという作業が発生します。
期間はというと、「決算月の2か月後」というルールになっています。
このときに、決算月になって大きな売り上げがあったり、収益に大きな変化がでるようなことがあると、節税のためにいろいろと準備したりする時間が足りなくなる可能性があります。
具体的には決算月前に予想外な収入があって、決算月までに設備投資や従業員を増やす時間がなく結果その収入分は法人税として持っていかれるといった感じです。
なので、決算月のタイミングはバタバタとしそうな繁忙期の時期はやめておいたほうがいいと思います。
決算月の違いで起こる影響としてのその他の注意点
消費税についてはさっき触れたとおりで、条件を満たしたら2期は消費税が免除になります。
なので、決算月は法人化する月から離れていた方がいいよ、という話でしたよね。
先ほども紹介した通り、税理士や会計士の業務が集中する月も避けた方がいいです。
この後も紹介しますが、日本は3月決算や12月決算の法人が多いです。
決算の書類をあれこれ準備して最終的に2か月後には数字を固めないといけないので、会計士や税理士も1月~5月くらいまでは忙しいんじゃないかと思います。
その時期はもしかすると何か相談しても返事が遅かったり、ゆっくり話をする時間がない可能性もゼロではないです。
僕の会社は12月決算ですが、実際に他の会社の業務もあるせいか会計士から書類の不備などの連絡が遅いときがありました。
土日なども休まず働いてくれてるようでしたが、やっぱり繫忙期はそういうこともあり得ます。
とはいえ、あまりそれを気にしていたら結局、決算月をいつにするべきか決まらなくなります。
こちらとしてはしっかり報酬を支払って対応をお願いするわけですし、何かあればチェックした側の責任も生じます。
なので、あくまでも「そういうこともあり得る」という程度で心に留めておくといいと思います。
一般的な会社の決算月はいつが多い?
日本では3月を決算月にしている会社が多いです。
これは別に3月にすると特別なメリットがあるわけではなく、慣習的なことが要因です。
ちなみにですが、会計のルールなどが変更されると、タイミング的に3月決算の会社から参考にされるケースがしばしばあります。
大したことではないですけど、もし自分が12月とかを決算月にしていたら、何がどう変更になるのか、どんなふうにしたらいいのかを3月決算の会社を例にして準備することができます。
個人事業主から法人化した場合、自分とは違う月を決算月にしている人から話を聞くのもいいかもしれないです。
ただし、この辺りは心配しなくても何か変更があれば税理士や会計士から教えてもらえるとは思います。
実務的なことを自分でしないといけない場合、前例があると助かることもあるかもしれません。
個人事業主から法人化するタイミングの基準はどこで判断するの?
法人化をする判断基準はいくつかありますが、次のようなものがあります。
- 課税事業者(売上1,000万以上)になるタイミング
- 法人税率を上回るタイミング
詳しく見ていきます。
課税事業者の対象になる売上高になったとき
個人事業主であっても売上が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税を納税しないといけません。
先に紹介したとおり、このタイミングで上手く法人化することで2期分の消費税が免除されます。
永遠に免除されるわけではないですが、一先ず消費税を免除する方法としては有効ではないでしょうか。
個人事業主の税率が法人税率よりも高くなるとき
個人事業主の所得税は、MAX45%です。
課税所得が大きくなるほど税率も重くなるような仕組みになっています。
法人はどうかというと、普通法人の場合は利益が800万円以下か800万円を超えるかで変わってきます。
- 800万円以下→15%
- 800万円超→23.2%
実際にはこれに地方税なども加わるのでプラス10%程度かなとは思いますが、それでもMAX45%の個人事業主と比較すればまだマシです!
個人事業主の場合は、課税所得が330万円~649.9万円の範囲の場合、所得税が20%課税されます。
ここに住民税をプラスすると大体30%くらいになるので、法人の税率の方が低くなる計算になります。
かなりざっくりした計算にはなりますが、課税所得がいくらになりそうかを計算して法人化のタイミングを決めるのは、やはり重要だと思います。
社会保険料の負担には要注意
法人化すると、社会保険料の負担が発生します。
この社保は給与(役員報酬)の額によっては結構な金額になってしまいます。
加入する年金や健康保険の制度について軽くおさらいすると、以下のとおりです。
個人事業主 | 法人(社長になった場合) | |
年金 | 国民年金 | 国民年金+厚生年金 |
健康保険 | 国民健康保険 | 健康保険(協会けんぽ) |
で、問題はどちらの方が保険料が高いかということですよね。
まず年金についてですが、厚生年金の保険料率は会社と従業員(社長)合わせて18.3%です。
一方、個人事業主は国民年金のみなので、保険料(2022年度)は月額16,590円のみです。
このように、一般的には厚生年金の方が保険料の負担は重くなりますが、その分将来受け取れる年金の額が大きくなるというメリットがあります。
■関連リンク
健康保険については、ぶっちゃけ大差はないです。
もっと気にするなら年金の保険料をよくチェックしていた方がいいと思います。
法人化のタイミングと決算月は事業の状況などをみて決めよう
法人化するとなれば、決算月と合わせて何月にするのか迷うと思います。
今回紹介したとおり、毎月1日を避けたり、法人化のタイミングと決算月はなるべく離して消費税の免税を受けられるようにするなど、色々な面からみて決めるのがベストです。
決算月が終わるとなにかとバタバタすると思うので、事業が繁忙期を迎えるのはいつなのかも押さえておきましょう。
ここではざっくりとした数字でお伝えしましたが、個人事業主としての課税所得があまりにも大きくなると法人化した方がお得です。
売上高だけで判断するのは難しい点でもあるので、一度税理士に相談するなどしてアドバイスをもらうことをオススメします。
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