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そもそもマイクロ法人とは簡単になに?
マイクロ法人とは、ものすごく簡単にいうと「ひとり会社」です。つまり、株主と取締役が自分一人の小さな会社です。
個人事業主の中には、特に税金や国民健康保険料が高すぎて困っている人もいると思います。そういった場合、マイクロ法人を作ることで税金や保険料を抑えられるかもしれません。
主に節税できるのは、以下の2つです。
- 所得税
- 社会保険料
経費の扱いも個人事業主と少し違うところもあり、マイクロ法人と個人事業を両立させることでメリットが大きくなります。
よく言われているのが、「個人事業主と法人のいいとこ取りをする」といったイメージです。
■ペーパーカンパニーとの違いは事業実態の有無
マイクロ法人と似たようなものとして、ペーパーカンパニーというものがあります。
これは何かというと本当に言葉のまんまで、会社は設立されているけど事業の実態がありません。
じゃぁなんのために作るのかというと、その目的は様々で例えば、節税/資産管理などです。なかには犯罪に使うという悪い人もいるようです。
マイクロ法人との違いは、事業の実態があるかどうかです。
ペーパーカンパニーも節税目的のために設立されることがありますが、脱税とみなされるケースもあるので要注意です。簡単にいえば、グレーな使われ方をしている場合が多いってことですね。
マイクロ法人を作る大きなメリットは2つ
マイクロ法人を作るメリットとしては、次の2つがあると思います。
- 節税のため
- 社会的な信用を得るため
節税に関しては後ほど詳しく見ていきますが、やはりメリットとしては社会的信用です。
個人の名前で事業をするよりも、会社の名前や取締役という肩書がある方が相手にとっては安心ですよね。取引先にも信用を与えられますし、銀行から融資を受ける際にも有利だと考えられます。
マイクロ法人が違法になる節税とは?
節税はやり方を間違えると脱税になり、違法となります。
税金を軽くするためにわざと数字をごまかしたり、架空の数字をつくりあげてしまうのは脱税になりますので、注意が必要です。
例えば、
- 経費を不当に多く計上する
- 売り上げを過少申告する
などが、代表的なものになります。
節税しようとするあまり、ルールを無視して経費計上を行ったり、所得をわざと小さく見せようとする行為は脱税であり違法になってしまうので、きちんと合法的に認められる手段で節税しないといけないですね。
マイクロ法人は節税効果がありますが、それはきちんとした会計処理が出来ていることが前提です。先ほど挙げたようなことをしなければ、合法的に節税できますよ。
個人事業主がマイクロ法人を作って節税するのは合法的に認められる
脱税は必ずダメですが、節税をするために個人事業主がマイクロ法人を作るのは何も問題ありません。
それではマイクロ法人の具体的な節税効果を見ていきます。
■所得税の節税
マイクロ法人を作ると、自分の会社からお金をもらうという形をつくれることになります。この給与(役員報酬)には、最低55万円の給与所得控除が適用できます。
個人事業主では65万の青色申告控除がありますが、それにプラスして給与所得控除が受けられるのは大きなメリットです。
■役員報酬は給与所得控除内の金額に
実は、年間の役員報酬を給与所得控除の55万円以内に収めれば社会保険料が最低等級になり、一番安い金額で済ますことができます。
マイクロ法人は自分が社長なので、自分で役員報酬額を決めることになります。そこで、給与所得控除の55万円以内に収まる金額に決めれば、社会保険料の節税になるというわけですね。これは毎月支払っている国民健康保険料と比較するとだいぶ安くなる可能性があります。
具体的な金額ですが、役員報酬を月額4万5,000円にすれば年間で54万円となり、給与所得控除55万円以内に収まります。
とはいえ、本当にこの金額で良いのかどうかは担当の税理士さんに相談することをおすすめします。
■社会保険料が安くなる
社会保険料についてさらに詳しく見ていきます。
給与控除の55万円以内に収めた結果、社会保険料が最低等級になって安くなります。
その結果、個人事業主のみで事業をしている場合と比較すると、加入する健康保険の種類も変わるので節税できます。
言葉だけだとちょっと分かりにくいので、表で見てみることにします。
個人事業主のみ | 個人事業主+マイクロ法人 | ||
個人事業主 | マイクロ法人 | ||
健康保険 | 国民健康保険 | - | 健康保険(社保) |
年金 | 国民年金 | - | 国民年金+厚生年金 (厚生年金のみ支払い) |
マイクロ法人を作ると、個人事業主としては都道府県が管轄する国民健康保険に加入しなくてもよくなります。理由は、マイクロ法人の代表として健康保険や厚生年金に加入するからです。
扶養家族がいる場合、個人事業主のみだと家族分も国民健康保険に加入し支払いが必要になります。これは結構ヘビーな金額になります。
その点、マイクロ法人を作って健康保険と厚生年金のいわゆる社保に加入すれば、負担が大きかった国民健康保険の支払いが不要になります。なぜならば、年収が130万円未満の配偶者などは健康保険の扶養に入ることができ、国民健康保険料の支払いをしなくてOKになるからです。年金についても、扶養に入れば厚生年金の保険料負担はありません。
この辺りは健康保険や年金の基礎知識もちょっと必要になるところですが、マイクロ法人を作ると加入する社会保険が変わるという点を押さえることができたらOKです。
■保険料の比較
これらをふまえて、保険料の比較をしてみたいと思います。
●個人事業主で国民健康保険と国民年金保険(基礎年金)の2つに加入
個人事業主で年収1,000万円だとすると、以下の国民健康保険と国民年金保険(基礎年金)の2つに加入することになります。やはり、国民健康保険は年収が高いほど最高限度額の99万円になります。
国民健康保険(年額) | 99万円(月8.25万円) |
国民年金保険(年額) | 約20万円(月1.6万円) |
●マイクロ法人で健康保険と厚生年金のいわゆる社会保険に加入
一方、マイクロ法人を作ると高額な国保や国民年金の保険料の支払いがなくなり、健康保険と厚生年金のいわゆる社会保険に加入することになります。簡単にいうと個人事業主から会社員になり、加入する保険や年金が変わるという理解でいいと思います。
マイクロ法人で1人社長になれば給与を自分で設定できるため、保険料が一番安くなる範囲に収まる6万3,000円未満にしておけば、最低等級になります。
そうすると、以下のように個人事業主として支払う金額と比較すれば月2万ほどで済みます。
健康保険(年額) | 約8万円(月6千円ほど) |
厚生年金(年額) | 約19万円(月1.6万円) |
ちなみに、マイクロ法人を作り加入する社会保険は一般的には全国健康保険協会(協会けんぽ)です。
■消費税を免税できる可能性がある
個人事業主として発生した収入の一部をマイクロ法人に移すことで、消費税がかからなくなる可能性があります。
個人事業主の場合、売上が1,000万円を超えると10%の消費税がかかります。例えば、売上1,500万円の場合はその10%である150万円が消費税として取られます。これはかなり高額です。
そこで、1,000万を超えてしまう500万円をマイクロ法人に移します。そうすると個人事業主としての売上は1,000万円以内になるので、消費税の支払が不要になります。
沢山稼いでいる人には良い節税になりますよね。
マイクロ法人は個人事業主と法人とのいいとこどり!
結果として、マイクロ法人は個人事業主との二刀流の運営をすることでメリットがあります。ここまで紹介してきた内容もふまえてもう一度整理します。
■個人事業主をしながら厚生年金に加入できる
個人事業主だけだと、加入する年金は国民年金のみになります。
国民年金(基礎年金)だけだと、会社勤めの方が入っている厚生年金と比較すると、将来受給できる年金は月に大体5万円程度と言われています。ちなみに、厚生年金は大体15万円前後です。
会社員は国民年金にプラスして厚生年金に加入できているので、当然もらえる年金も会社員の方が多くなるということですね。※年金の受給額についてはこちらで詳しくご紹介しています。
でも、個人事業主だと厚生年金には加入できません。
そこでマイクロ法人を作って社長(=会社員)という立場を増やすことで、厚生年金に加入できるようになります!
■所得税や住民税の節税
マイクロ法人では給与所得控除が最低55万円であることを紹介しました。
個人事業主だけだと青色申告控除の65万円のみですが、マイクロ法人との二刀流だと給与所得控除もプラスされるというメリットがあります。
■社会保険料の節税
個人事業主の場合、国民年金と国民健康保険に加入すると思います。これを、マイクロ法人から役員報酬を受け取る形式にすることで、個人事業主としては加入をしなくてよくなります。
役員報酬の金額については、給与所得控除も考慮しながら決定する必要があります。
■自宅が賃貸であれば経費になる
マイクロ法人は自宅が賃貸の場合、自宅を役員社宅にして賃貸が経費扱いになります。
個人事業主でも同じようなことはできますが、自宅を仕事で利用していることが条件で、さらに仕事に使用している割合のみが経費になります。
それと比較すると、マイクロ法人の場合は自宅が仕事場になっているかどうかは関係なく、経費扱いになる条件が個人事業主より緩和されます。経費にできる割合は賃料の最大9割です。
個人事業主とマイクロ法人とではどのくらいの節税ができる?
ここまで紹介した内容でどれくらい節税できるのか、簡単に比較をしてみます。
前提条件として、夫 年収500万/妻 年収90万(パート)としたいと思います。
■社会保険料
●個人事業主のみの場合
夫 | 妻 | 合計 | |
健康保険 | 国民健康保険 約45万円 |
国民健康保険 約10万円 |
約55万円 |
年金 | 国民年金 約20万円 |
国民年金 約20万円 |
約40万円 |
●個人事業主+マイクロ法人の場合
マイクロ法人 | 夫 | 妻 | 合計 | |
健康保険 | 健康保険 約3万円 |
健康保険 約3万円 |
扶養内 (支払いなし) |
約6万円 |
年金 | 国民年金+厚生年金 約10万円 |
国民年金+厚生年金 約10万円 |
扶養内 (支払いなし) |
約20万円 |
健康保険は49万、年金は20万ほどの節税効果があります。ざっくりとした計算ですが、それでもかなりの差がありますね。
国民健康保険は市町村によって金額が違いますが、夫が45万、妻が10万とします。国民年金は一定額で、2021年は月額16,610円です。
マイクロ法人では会社と自己負担が半分ずつになります。まぁ一人会社なので、全部自分で支払うようなものですが…とはいえ、金額でいえば個人事業主よりもかなりお得です。
■各種控除と経費
家賃は年間120万円で、費用計上できるのが7割の84万と仮定します。
個人事業主のみ | 個人事業主+マイクロ法人 | |
基礎控除 | 48万円 | 48万円 |
青色申告控除 | 65万円 | 65万円 |
給与所得控除 | - | 55万円 |
社会保険料(会社負担分) | - | 13万 (健康保険+年金分) |
社会保険料(自己負担分) | 95万円 | 13万円 |
役員社宅 | - | 84万円 |
合計 | 208万円 | 278万円 |
こちらについては、やっぱり青色申告控除と給与所得控除がダブルで適用されるのが大きいですね。
マイクロ法人での節税は合法!個人事業と両立がおすすめ
マイクロ法人を作るメリットをまとめると、
- 所得税の節税
- 社会保険料が安くなる
- 消費税が免税になるケースがある
- 社会的な信用を得られる
でした。
個人事業主との二刀流を実践することで節税効果が高くなります。
ちゃんとした処理をすれば、脱税で違法と言われることはありません。一番は節税できた分、また事業を拡大できるという部分だと思います。
ただし、マイクロ法人を作ることで経理業務が増えるなど事務量が増える可能性もあります。また税理士さんにも法人化することで、確定申告料等は当然ながら上がると思います。
節税のために手間が膨大になってしまわないように、バランスも考えながら決断するのがいいと思います。
本ブログ「副業人生」で紹介している全ての内容においては、正当性を保証するものではありません。また、投資商品や保険商品等の勧誘を目的としたものでもありません。
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