一番の理由は、法人は「事業のための費用」としてみられている範囲が大きいからです。
目次
法人が大きく経費で落とせるのは「役員報酬」と「旅費」
経費といっても色々ありますよね。
個人と法人では扱いが違う部分もあり、僕も知人の社長さんに聞いたり、書籍等で調べているうちになんでそんなに違うのかなと疑問に思うことがありました。
今回はそうした個人的な経験や、書籍や動画などで解説されている情報を元に、法人の経費について分かりやすく解説していきたいと思います。
まず、僕が調べてみたところ、法人の場合、特に経費として大きく落とせるのが「役員報酬」と「旅費」であることが分かりました。
そこで今回は役員報酬と旅費にスポットライトを当てて、どうしてこの2つが経費処理する上で大事なのかを分かりやすく解説していきます。
役員報酬
■役員報酬のメリット
既に家族経営の場合や、これから家族を含めて事業をする場合、役員になった家族にも給料を支払うことで所得が分散され、節税効果が高くなります。
結果的には、個人事業主で個人として全部所得でもっていくことで納める所得税よりかは、法人にして役員報酬で分散した方が法人として納める税金(法人税)は安くなります。
また、注意が必要なのが、役員報酬は1年に1度しか変更できないという点です。
それと、数か月分まとめて支払っても経費にはできますが、余計な手続きが必要になります。
なので、月1回など普通の給料みたいに支払うのがおすすめです。
■役員報酬のデメリット
ただ、この節税方法にはデメリットもあります。
まず、管理が面倒になります。
税理士さんがいてくれたら大丈夫と思っても、そもそも提出する帳簿の管理などが煩雑になります。
さらに重要な点として、所得税だけでなく住民税や社会保険料についても考えないといけません。
住民税の所得割額や社会保険料は、所得が大きくなるほど重くなります。
所得分散によって家族の所得が増えると、住民税や社会保険料の負担も大きくなるので注意が必要な場合もあります。
所得分散で社会保険料はどうなるの?
所得分散させるパターンと、しないパターンで比較します。
※社会保険のみで、住民税や法人税は含みません。
所得分散しない場合
- 夫:年収 1,000万円
- 妻:年収 100万円
夫(個人負担分) | 妻 | 合計 | |
健康保険 | 48万8,538円 | 被扶養者なのでなし | 48万8,538円 |
社会保険 | 71万3,700円 | 被扶養者なのでなし | 71万3,700円 |
合計 | 120万2,238円 | ― | 120万2,238円 |
所得分散する場合
- 夫:年収 700万
- 妻:年収 400万
夫(個人負担分) | 妻 | 合計 | |
健康保険 | 34万7,274円 | 20万124円 | 54万7,398円 |
社会保険 | 64万7,820円 | 37万3,320円 | 102万1,140円 |
合計 | 99万5,094円 | 57万3,444円 | 156万8,538円 |
妻を役員にしたとして、所得分散させます。
さっきは扶養に入っていた妻ですが、年収130万円を超えたことで扶養から外れることになります。
結果として、所得分散させた方が約36万円も社会保険料が高くなってしまいました。
これは要するに、「扶養から外れると社会保険料が上がっちゃいますよ」ということです。
社会保険料は会社と従業員が折半するというルールなので、妻の社会保険料が増えるということは、会社の負担も増えることになります。
家族に所得分散させる場合は、扶養のことも考えて金額を決めたほうがいいです。
ただし、これは社会保険のみの試算です。
当然、個人事業の所得税よりかは、役員報酬に分散した方が結果的には法人税の方が安くなることが多いです。
適切な役員報酬の決め方はどうやるの?
ここまで読んで、「じゃあ役員報酬って結局どう決めるの?」となる方も多いと思います。
勿論、自分自身で決められますが、重要なのは、生活費が十分賄えるだけの金額に設定すること、それと定期(毎月)同額を支払える金額にすることです。
今月は100万円だけど来月は50万で、その次は200万円とかだと定期同額給与とは言えません。
また、あまりに少ない金額にしてしまうと生活費が足りなくなるかもしれないです。
足りなくなると会社からお金を貸してもらう形になってしまいますが、これはイメージが良くありませんし、それだけ報酬が少ないということは税務調査が入る可能性もあるようです。
というわけで、役員報酬は売上や生活費とのバランスを見て決めるのがいいと思います。
法人として一番ネックとなる社会保険料との兼ね合いもあるとは思いますが、そこだけ見て決めてしまうのは危険だと思います。
旅費
出張のときに手当を受け取ることがあると思います。
この旅費は給与には含まれず非課税扱いになるので、そもそも所得税や住民税がかかりません。
また、給与の金額によって決まる社会保険料にも影響がないので、保険料がかかることもありません。
支払う側としても経費で落とせるので節税効果があります。
ちなみに、出張手当が余ったらその分は自分のお小遣いとして懐に入れることができます。
これは家族経営で社長が出張手当を受け取った場合も同じです。
ただ、出張手当は丁度使い切れるくらいの妥当な金額に設定しておくのが大前提です。
まぁ少々電車の乗り継ぎなどを頑張って節約して、出張代を多少浮かせるくらいならあり得るとは思いますが、普通に宿泊や食事をしてもたくさん余ってしまうくらいの金額に設定するのはダメですよね。
社長だと手当も他の従業員と比較して多くなるケースも多いと思いますが、そうはいっても過度な金額を設定しないように要注意です。
さらに、国内の出張旅費は消費税の節税にもつながるんです。
納める消費税の計算式は、次のように計算されます。
消費税=受け取る消費税ー支払う消費税
「受け取る消費税」というのは、モノやサービスを売ったときにお客さんから受け取る消費税です。
もうちょっと厳密にいうと、お客さんなどに代わって納める消費税なので、「預かった消費税」の方が適切かもです。
「支払う消費税」というのは逆に、モノやサービスを買ったときにお店などに払う消費税です。
計算式のとおり、ここが大きいと支払う消費税は少なくて済みます。
預かった消費税から差し引く分を「課税仕入れ」と言いますが、出張旅費はこれに該当します。
なので、その分支払う消費税が少なくなって節税になるということです。
出張手当はいくらにするべき?
国内か海外かで違ってくるとは思いますが、社長だったとしても、多くて1日につき2万円以内には収めておくのが無難だと思われます。
社長だったら新幹線はグリーン車で、飛行機もビジネスクラスで搭乗することもあると思いますが、あんまり手当を多くし過ぎると必要のない部分に使ってしまう可能性があります。
先ほどもちょっと触れたとおり、普通に過ごして丁度使い切るくらいの金額にしておくと良いと思います。
法人が他にも経費で落とせるものは?
役員報酬や旅費以外でも、法人はいろいろなものを経費で落とせます。
中には「そんなものまでいいの?」と思ってしまうものまでありますが、ざっくりまとめて紹介していきます。
家
例えば法人成りした場合、仕事場を兼ねている自宅を社宅にすれば、プライベートで使用している部分も関係なくまるごと経費として処理できるようになります。
この点は、事業に使っている部分しか経費にならない個人事業主と比べるとかなり大きなメリットです。
車
法人名義で車を購入した場合、ガソリン代や車検など車の維持費を経費で落とすことができます。
仕事でよく車を使う人にとっては大きな節税効果になりますね。
ただ、高級車やスポーツカーなどは「ほんとに事業のための車なの?」と疑われやすいです。そうした車を買う場合は、きちんと仕事に使っていることを証明できるようにしておく必要性が高いと思われます。
保険
生命保険の種類によっては保険料を経費で落とすことができます。
具体的には損金算入されるタイプの保険がそれに当たるのですが、最近は保険の改正があったこともあり、損金算入される保険はそれほど多くないようです。
それと、保険料は確かに経費で落とせるのですが、保険金が入ったときにそのお金が収入とみなされる点には注意が必要です。
節税のために入ったのに保険金のせいで法人税が高くなった…という事態が発生するかもしれないので、契約前によく考えることをおすすめします。
飲食代
仕事に関係あるものに限りますが、飲食代も経費で落とせます。
お客さんと会議しながら食べたランチ代やお茶代がそれに当てはまります。
具体的には接待交際費などで処理することができます。
福利厚生費
たとえば健康診断の費用は、福利厚生費として処理できます。
注意点としてその費用は会社が医療機関へ直接支払う必要があります。
他にも社員の健康づくりとしてジムに通えるようにする場合もあると思います。
個人事業主ではなかなか難しいようですが、法人の場合は福利厚生費として経費にできます。
法人の経費の割合ってあるの?
法人の経費については業種によってバラつきがあるようです。
なので、「何%以内だったら良い・悪い」というのは一概には言えません。
目安としては、以下のようにいわれています。
- 小売業・・・80%程度
- 製造業・・・70%程度
- サービス業・・・50%程度
あくまでも目安なので、法人を個別にチェックしたら大きなバラつきが出ることもあり得ます。
PCでの作業が多い仕事などは経費の割合も比較的低いと思います。
ただ、単純に経費が高いからダメで低ければいいという決まりはないですし、必要な経費を適切に処理していることが一番大事ですよね。
法人と個人事業主との経費の扱いが違う理由はここ!
法人と個人事業主とでは、経費の範囲などが違います。
なんで違いがあるのか、理由を簡単にまとめると次のようになります。
法人
会社は利益を出すことを前提として活動している存在なので、「当然事業用に使ってる!」という認識があり、経費の範囲も広く認められている。
個人事業主
公私混同しやすい環境なので、きちんとチェックしないと経費で落とそうとしているものが本当に事業のために使われたのかどうか分からない。
結果、法人と比べても経費の範囲が狭い。
「法人ってそもそも誰のもの?」という話ですが、分かりやすいのが株主です。
株主って企業に出資しているわけですけど、経営自体はその会社の社長などがやっていて、別に株主が直接経営をしているわけではないですよね。
その代わり、株主は会社が利益を出したときに分配金という形で利益の一部をもらいます。
会社で一番エラい人と言えば「社長でしょ!」となるかもですが、実質的な会社のオーナーは株主です。だから、会社は株主を満足させるために利益を出すことが当然の使命と考えられます。
そういう事実があるので、経費についても「当然、事業に使われる」という前提が成り立っているということです。
個人事業主はあくまでも「自分のため」という側面が法人よりも強いので、経費についても法人よりは範囲が狭くなっています。
法人の方が経費で大きく落とせる!ただし安易な判断は注意が必要!
節税のために法人成りを考えている方も多いと思いますが、家族に役員になってもらうことで高い節税効果が期待できる可能性があります。
やっぱり、自分一人に収入が集中してしまうと税金でゴッソリ持って行かれてしまうので、分散させるのが得策だと思います。
とはいえ、そうすることで管理が余計に面倒になったり、守らなければいけないルールが発生するのも事実です。
しかも、よく考えないと社会保険料や住民税の負担が大きくなってしまう場合もあり得ます。
まずは役員報酬でどれくらい節税できそうか、税理士などに相談してみるのもいいと思います。
旅費については所得税・住民税がかからないだけでなく、消費税の控除という効果まであります。
出張が多い場合は、高い節税効果が見込めるかもしれません。
法人は個人事業主に比べて「事業のため、利益のため」という側面が強いため、経費の範囲も広くなっています。
法人成りを検討されている方はその趣旨も理解しつつ、シミュレーションを重ねることをおすすめします。
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